空間分解遺伝子発現解析が造礁サンゴ Pocillopora acuta の局所特異的機能を解明
Spatially resolved gene expression analysis illuminates location-specific functions in the reef-building coral Pocillopora acuta
造礁サンゴ Pocillopora acuta において、レーザーキャプチャマイクロダイセクションとRNAシーケンシングを組み合わせて組織特異的な遺伝子発現を解析した。海水に接する口腔組織では、アミノ酸合成、膜輸送、シグナル伝達、環境感知、分泌に関連する1,253個の遺伝子上昇が見られ、免疫および微生物認識遺伝子(ムチン、レクチン、TLR、MyD88など)の発現が高いことが示された。一方、骨格形成を担う口外組織では、発生プロセス、細胞接着、刺激応答に関連する552個の遺伝子上昇が見られ、キチン合成酵素やWnt経路メンバーなどの生体鉱化関連遺伝子の発現が強いことが示唆された。多くの遺伝子が複数の組織で発現しており、機能的バイオマーカーは単一遺伝子ではなく多遺伝子発現パターンになる可能性が示唆された。本研究は、サンゴのストレス応答メカニズムの解明、その限界の予測、介入策の適用に不可欠な空間分解能の重要性を強調している。
- 造礁サンゴ Pocillopora acuta で、レーザーキャプチャマイクロダイセクションと RNA シーケンシングを組み合わせた空間分解遺伝子発現解析を実施した。
- 海水に接する口腔組織で 1,253 個の遺伝子上昇を検出し、ムチン、レクチン、TLR、MyD88 など免疫・微生物認識関連遺伝子の発現が高いことを示した。
- 骨格形成を担う口外組織では 552 個の遺伝子上昇を検出し、キチン合成酵素や Wnt 経路メンバーなど生体鉱化関連遺伝子の発現が強いことを示唆した。
- 多くの遺伝子が複数組織で発現しており、機能的バイオマーカーは単一遺伝子ではなく多遺伝子発現パターンになり得るとの示唆を示した。
サンゴの組織特異的な遺伝子発現を空間分解で解析した基礎研究で、直接の事業インパクトは小さい。ただし、レーザーキャプチャマイクロダイセクション+RNAシーケンシングという空間トランスクリプトーム手法を海洋無脊椎動物に適用し、免疫・微生物認識(ムチン、レクチン、TLR、MyD88)と生体鉱化(キチン合成酵素、Wnt経路)の組織別マーカーを切り分けた点は、空間オミクス市場の応用領域拡大を示す事例として押さえておきたい。単一遺伝子ではなく多遺伝子発現パターンをバイオマーカーとする方向性は、環境ストレス診断・育種・バイオモニタリング製品の設計思想に通じるため、空間オミクス装置・試薬・解析ソフトを手掛ける企業の用途開拓を追う材料になる。