抗TNF療法前後の小児単一細胞腸管エコシステムの協調的変化
Concerted changes in the pediatric single-cell intestinal ecosystem before and after anti-TNF blockade
クローン病(CD)は炎症性腸疾患(IBD)の一種であり、抗TNF療法が一般的だが、多くの患者は再発・進行する。本研究では、治療未経験の小児CD患者(n=14)、治療後患者(n=8)、および対照群(n=13)の回腸生検組織を対象に、臨床データ、フローサイトメトリー、組織学、単一細胞RNAシーケンシング(scRNA-seq)を組み合わせて解析した。201,883個の単一細胞トランスクリプトームを解析するために、ARBOLという階層的クラスタリングアプローチを開発した。治療未経験の小児CD患者と対照群では、広範な細胞種組成は類似していたが、細胞サブセットと状態には有意な違いが見られた。ARBOLを用いて、治療未経験の小児CD患者におけるT細胞、自然リンパ球、骨髄細胞、上皮細胞の状態を疾患重症度や抗TNF療法の反応性と関連付けた。さらに、治療後の生検組織は、治療未経験の小児CDと治療後の成人CDの中間に位置し、抗TNF療法が小児の細胞エコシステムを成人により治療抵抗性の状態へと移行させることが示唆された。本研究は、治療未経験のコホート、高解像度のscRNA-seqデータ解析、臨床転帰を統合することで、CDの病態進行を予測する可能性のあるベースラインの細胞状態を理解することを目指している。
- 治療未経験の小児クローン病患者14人、治療後患者8人、対照群13人の回腸生検組織を対象に、201,883個の単一細胞トランスクリプトームを解析した
- ARBOLという階層的クラスタリングアプローチを新規開発し、細胞サブセットと状態を疾患重症度・抗TNF療法反応性と関連付けた
- 抗TNF療法が小児の細胞エコシステムを成人の治療抵抗性の状態へと移行させることが示唆された
本研究は、小児クローン病の治療前後の腸管細胞エコシステムを単一細胞RNAシーケンシングで解析し、抗TNF療法が細胞状態を成人型・治療抵抗性に移行させる可能性を示唆した点が重要。特にARBOLという階層的クラスタリング解析手法を新規開発しており、疾患進行予測バイオマーカー開発につながる可能性がある。炎症性腸疾患治療の個別化医療やバイオマーカー企業にとって投資判断に資する基礎的知見と言える。