炭化ケイ素(SiC)静電誘導トランジスタ(SIT)を用いた高周波・高温クラスA増幅器の開発
Development of a High-Frequency, High-Temperature Class-A Amplifier Based on a Silicon Carbide Static Induction Transistor
本論文では、50MHz、400°Cで動作するクラスA増幅器の開発について報告する。この増幅器は、市販の4H-SiC静電誘導トランジスタ(SIT)をアクティブデバイスとして利用し、入出力整合ネットワークとDCバイアスネットワークを組み込んでいる。これらのネットワークは、薄膜スパイラルインダクタ、金属-絶縁膜-金属(MIM)キャパシタ、厚膜チップ抵抗器で構成される。増幅器の設計と最適化には、KeysightのADS 2023ソフトウェアで開発された小信号SiC SITモデルが使用された。SiC SIT増幅器のSパラメータは、25°Cから400°Cの温度範囲、20MHzから100MHzの周波数範囲で記録され、25°Cと400°Cでのゲイン(S21)は約15.8dBと5.80dBを示した。50MHz、400°Cでの入出力反射係数はそれぞれ-18.5dB、-15.2dBであった。ノイズ指数と位相ノイズは25°Cから400°Cの温度範囲で測定され、50MHzではノイズ指数は温度範囲全体で21%の増加に留まり、位相ノイズの1kHzオフセットは-110dBc/Hz未満であった。安定度係数Kは、400°Cで周波数範囲全体にわたり無条件安定であることを示した。最後に、1dB圧縮点は50MHz、400°Cで測定され、出力は約9.5dBであった。シミュレーション結果と測定結果は、400°Cでモデル誤差が10%以内であることを示している。
- 4H-SiC静電誘導トランジスタ(SIT)を用いたクラスA増幅器が50MHz、400°Cで動作することを実証
- 400°Cにおいて無条件安定(安定度係数Kが全周波数範囲で1超)を達成
- 50MHz、400°Cでゲイン約5.80dB、入出力反射係数-18.5dB/-15.2dB、1dB圧縮点で出力約9.5dBを実現
- 25°Cから400°Cの温度範囲でノイズ指数の増加は21%に留まり、位相ノイズは-110dBc/Hz未満を維持
- シミュレーションと測定結果のモデル誤差が400°Cで10%以内と高精度
本論文は、炭化ケイ素(SiC)静電誘導トランジスタ(SIT)を用いた増幅器が400°Cという極高温環境でも動作可能であることを実証した点が重要。SiCパワー半導体は既にEVや産業機器で普及しつつあるが、高周波・高温向けSITという異種デバイスの実用化が進めば、航空宇宙・地熱発電・石油掘削など過酷環境向けエレクトロニクスの市場拡大につながる。特に400°Cでも無条件安定かつノイズ性能を維持する結果は、防衛・宇宙・エネルギーセクターでの採用可能性を示唆しており、SiCデバイス投資の新たな用途領域として注目に値する。