積層造形高エントロピー合金における相分解と元素偏析が孔食感受性に与える影響
Effect of Phase Decomposition and Elemental Partitioning on Pitting Corrosion Susceptibility in Additively Manufactured High-Entropy Alloys
レーザー指向性エネルギー堆積(LDED)法で製造されたAl0.5CoCrFeNi高エントロピー合金(HEA)において、アニーリングによる相分解と元素偏析が孔食挙動を制御するメカニズムを解明した。LDED法特有の急速凝固により、従来の製造法では見られない高濃度のCrを含む不安定なB2相が生成される。650°Cで1時間アニーリングすると、B2相内に(Cr, Fe, Co)リッチなσ相と(Cr, Fe)リッチな立方晶(BCC)相が優先的に析出し、同時に残存B2相のマトリックスからCrが枯渇しAlが濃縮される。この元素再偏析により、B2相の不動態皮膜の保護能力が著しく低下し、孔食電位と再不動態化電位の低下となって合金全体の孔食耐性が損なわれることが示された。これらの知見は、積層造形HEAの腐食メカニズムの基礎的理解を深め、制御された相変態による耐食性HEAの設計指針を提供する。
- LDED(レーザー指向性エネルギー堆積)法で作製したAl0.5CoCrFeNi高エントロピー合金は、急速凝固により従来製法にない高Cr濃度の不安定なB2相を生じる。
- 650°C・1時間のアニーリングでB2相内に(Cr, Fe, Co)リッチなσ相と(Cr, Fe)リッチなBCC相が優先析出し、残存B2相マトリックスはCrが枯渇、Alが濃縮する。
- この元素再偏析によりB2相の不動態皮膜の保護能が著しく低下し、孔食電位と再不動態化電位が低下して合金全体の孔食耐性が損なわれる。
- 知見は積層造形HEAの腐食メカニズム理解を深め、制御された相変態による耐食HEAの設計指針を提供する。
金属積層造形(レーザー指向性エネルギー堆積)で作るAl0.5CoCrFeNi高エントロピー合金の耐食性が、アニーリング時の相分解・元素偏析(σ相/BCC相析出とB2相のCr枯渇・Al濃縮)で大きく劣化することをメカニズムレベルで示した基礎研究。直接の製品・企業発表ではないが、積層造形部材を腐食環境(エネルギー、航空宇宙、化学プラント)で使う際の熱処理設計・信頼性保証の指針になる知見であり、AM用HEA粉末・後処理プロセスを手掛ける素材メーカーやAM装置各社の品質競争力を評価する材料になる。