GHKL ATPアーゼにおけるATP加水分解の初期段階を協同的に媒介する2つのGlu/Asp残基
Two Glu/Asp residues cooperatively mediate an early step of ATP hydrolysis in GHKL ATPases MutL and GyrB
GHKL ATPアーゼは、ATP加水分解の初期段階において、これまで単一の保存されたグルタミン酸残基が一般塩基として機能すると考えられてきた。しかし、この残基の変異はATPアーゼ活性とATP結合の両方を阻害することが判明した。本研究では、Aquifex aeolicus MutLとGyrBをモデル酵素として用い、X線結晶構造解析と変異導入実験により、このグルタミン酸残基に加え、求核性水分子と水素結合距離にある第二の保存された酸性残基の役割を解明した。その結果、効率的なATP加水分解には、2つの酸性残基の協同的な一般塩基機能が必要であることが示された。この知見は、ヒトMutLホモログであるPMS2やMLH1にも適用可能であり、臨床的に報告されている意義不明のバリアントがATPアーゼ活性を大幅に低下させ、機能障害を引き起こすことを示した。さらに、この第二の酸性残基はGHKL ATPアーゼの共通祖先に存在したが、Hsp90を含む一部の系統では後に修飾された可能性が示唆された。
- GHKL ATPアーゼのATP加水分解の初期段階では、単一の保存グルタミン酸残基ではなく2つの酸性残基が協同的に一般塩基として機能することを、Aquifex aeolicus MutLとGyrBを用いたX線結晶構造解析と変異導入実験で解明した。
- この二残基機構はヒトMutLホモログであるPMS2やMLH1にも適用でき、臨床報告されている意義不明バリアントがATPアーゼ活性を大幅に低下させ機能障害を引き起こすことを示した。
- 第二の酸性残基はGHKL ATPアーゼの共通祖先に存在したが、Hsp90を含む一部の系統では後に修飾された可能性が示唆された。
基礎的な構造生物学の成果だが、標的タンパク質の酵素機能を原子レベルで説明する知見であり、創薬標的としてのGHKL ATPアーゼ(MutL/PMS2/MLH1、Hsp90)の評価に直結する。特にPMS2・MLH1の意義不明バリアントがATPアーゼ活性低下を経て機能障害を起こすという因果の提示は、遺伝性腫瘍(リンチ症候群)関連の診断・変異解釈サービスや、Hsp90阻害剤を開発する癌領域の創薬企業にとってバリアント機能評価の根拠になり得る点を注目した。一方、具体的な企業・製品・提携の発表は含まれず、短期的な投資材料としては限定的と見る。