完全ワイヤレスの血管内神経インターフェースに向けた電力伝送効率の評価
Toward a fully wireless endovascular neural interface: Evaluating power transfer efficacy
血管内神経インターフェース(ENI)は、開頭手術なしで神経刺激・記録を行う低侵襲アプローチを提供するが、現在のデバイスは体外へ伸びる長いワイヤーが必要である。このワイヤーを除去するには、頭蓋骨を越えた効率的な電力伝送が不可欠だが、SAR(比吸収率)制限を満たす必要がある。本研究では、血管内幾何学的および生物学的制約内で動作する血管内受信コイル(Rx)と送信コイル(Tx)を設計・評価し、ワイヤレス電力伝送を最大化することを目指した。計算モデリング、ベンチトップ、および生体内の試験により、最適な動作周波数、結合度、コイル品質係数、電力伝送効率、SARを評価した。結果として、誘導電力伝送は臨床的に関連する深さで血管内デバイスに電力を供給できることが示された。最大電力伝送効率(PTE)は15mmで11%、30mmで2%に達し、SAR安全制限下で30mmにおいて最大72mWを供給できた。≤15mmでは長方形平面コイルペアが最も性能が良く、20mm超ではフェライトコアフラックスパイプTxとヘリカルRxの組み合わせが、ずれに対する耐性も高く、より優れた性能を示した。本研究は、血管内に配置可能なコイルを用いて多チャンネルENIをワイヤレスで給電する実現可能性を示しており、安全性と信頼性の向上を通じて技術を変革する可能性を秘めている。
- 血管内神経インターフェース(ENI)のワイヤレス電力伝送が、最大15mmで11%、30mmで2%の電力伝送効率(PTE)を達成した
- SAR安全制限下で30mmの距離において最大72mWの給電が可能であることが示された
- 長方形平面コイルペアとフェライトコアフラックスパイプTx/ヘリカルRxの2種類の設計が距離に応じた最適解として明らかになった
本研究は、脳卒中や脊髄損傷などに対する低侵襲神経インターフェースの実現に向けた重要なマイルストーンである。ワイヤレス給電により開頭手術不要で多チャンネルの神経刺激・記録が可能になれば、BCI(ブレイン・コンピュータ・インターフェース)の市場拡大と適用患者数の大幅な増加につながる。現状はまだ学術研究段階であり製品化には距離があるが、この方向性の技術が確立されれば、Neuralinkなどの既存プレイヤーとの競争構造や、侵襲度に応じたBCI市場のセグメンテーションに影響を与える可能性がある。投資家としては、この研究を起点にしたスタートアップ創出や、関連するワイヤレス給電・コイル設計技術を持つ企業への関心を持つべきだろう。