蒸留塗料廃棄物をABS、PP、PSベースのポリマーマトリックスの改質剤として価値化する研究
Valorization of Distilled Paint Waste as a Modifier of Polymer Matrices Based on ABS, PP and PS
本研究では、蒸留塗料廃棄物をアクリロニトリル-ブタジエン-スチレン(ABS)、ポリプロピレン(PP)、ポリスチレン(PS)マトリックスに10、20、30重量%の割合で配合する実現可能性を評価した。乾燥・粉砕後、押出成形により配合し、射出成形により試験片を作製した。溶融流動挙動、密度、衝撃特性、引張特性、熱安定性、熱遷移、動的機械応答を調査した。廃棄物添加の効果はマトリックスに強く依存した。PSでは、MFRは未添加PSと30重量%配合で9.52から24.85 g/10 minに増加し、Tgは106.4°Cから81.6°Cに低下した。熱重量分析(TGA)では、熱安定性に非単調でマトリックス依存の変化が見られた。機械的性能は一般的に廃棄物添加量の増加とともに低下し、ABSでは引張強度が42.21から26.17 MPaに、衝撃強度が17.51から0.23 kJ/m2に低下した。動的機械分析(DMA)は、剛性および緩和挙動におけるマトリックス依存の変化を確認した。結果は、調査した廃棄物バッチは3つの熱可塑性マトリックスすべてで加工可能であるが、廃棄物添加量の増加は明確な機械的および熱的トレードオフを伴うことを示している。
- 蒸留塗料廃棄物をABS、PP、PSに10/20/30重量%配合し、押出・射出成形で試験片を作製して実現可能性を評価した研究
- PSでは30重量%配合でMFRが9.52から24.85 g/10 minに上昇し、Tgは106.4°Cから81.6°Cに低下(流動性向上と耐熱性低下のトレードオフ)
- ABSでは引張強度が42.21から26.17 MPa、衝撃強度が17.51から0.23 kJ/m2へ低下し、機械的性能は配合量増加とともに悪化
- TGAによる熱安定性とDMAによる剛性・緩和挙動の変化はいずれもマトリックス依存で非単調だった
- 結論として当該廃棄物バッチはABS・PP・PSいずれでも加工可能だが、添加量増加に伴い機械的・熱的トレードオフが明確に生じる
塗料廃棄物という低コスト副産物をABS/PP/PSの改質剤として再利用する試みは、原料コストと廃棄物処理費の両方を下げうるリサイクル素材の研究方向を示す。ただしPS以外では引張・衝撃強度が大きく低下(ABSは衝撃強度17.51→0.23 kJ/m2)しており、現状は強度が要求されない低付加価値用途に限られる。実用化にはマトリックス別の最適配合と相溶化剤設計が鍵で、ABS/PP/PSを手掛ける素材メーカーや塗料・廃棄物処理業者にとっては追加収益化の選択肢になり得るが、本記事は実験室レベルの評価段階であり、投資判断には実証規模・コスト・規制上の廃棄物区分の確認が待たれる。