NiドーピングによるFe系触媒の設計戦略:密度汎関数理論による効率的なCO2活性化と解離に向けて
Ni-Doping as a Design Strategy for Fe-Based Catalysts: Towards Efficient CO2 Activation and Dissociation Studied by Density Functional Theory
本研究では、Feを母材としNiを低濃度でドーピングした二金属Ni-Fe触媒上でのCO2活性化を調査した。Niが置換原子または吸着原子として存在する場合、CO2活性化とそれに続くC-O結合開裂をどのように促進するかを評価した。Fe(100)スラブを用いて触媒表面をモデル化し、Niの影響を3つの構成((I)第一層のFe原子1つをNiで置換、(II)Niを吸着原子、(III)Ni置換Fe表面へのFe吸着原子)で検討した。いずれのケースでも最適化された構造はCO2活性化をもたらした。C-O結合解離のエネルギープロファイルを算出し、純Fe(100)(活性化エネルギー0.84 eV)と比較した。3つの系の中で、第一層のFeをNiで置換した構成が最も低いC-O結合開裂の活性化障壁(0.48 eV)を示し、これは純Fe(100)と比較して0.36 eVの大幅な低減である。Ni吸着原子-Fe(100)表面のみがより高い障壁(0.93 eV)を示した。これらの結果は、金属dバンド中心のスピン分解局所状態密度(LDOS)からスピン分裂を抽出することで合理化され、Ni1-Fe(100)の優れた性能は、結合解離中のより効率的な局所スピン再編成に起因することが明らかになった。
- Fe(100)スラブを母材としNiを低濃度ドーピングした二金属Ni-Fe触媒について、Niが置換原子・吸着原子として存在する3構成でのCO2活性化とC-O結合開裂をDFTで評価した研究
- 第一層のFe原子1つをNiで置換した構成(Ni1-Fe(100))が、C-O結合開裂の活性化障壁0.48 eVと3系中最も低く、純Fe(100)の0.84 eVから0.36 eV低減した
- Ni吸着原子を載せたFe(100)表面のみが純Feより高い障壁(0.93 eV)を示し、Niの導入形態によって効果が逆転することを確認
- 性能差は金属dバンド中心のスピン分解局所状態密度(LDOS)から抽出したスピン分裂で説明され、Ni1-Fe(100)の優位性は結合解離中のより効率的な局所スピン再編成に起因すると結論
密度汎関数理論(DFT)による触媒設計の研究で、Fe(100)表面の第一層FeをNiで置換するとC-O結合解離の活性化障壁が0.84 eV→0.48 eVへ0.36 eV低下するという定量的な知見が示された。CO2活性化・解離はメタネーションや逆水性ガスシフト、CO2電解還元などへの応用が広く、安価なFeベース触媒の性能を微量Niドーピングで引き上げられる点は、触媒メーカーやCO2利活用(CCU)事業者の素材戦略・コスト構造に波及しうる。ただし本件は計算科学の基礎研究段階であり、実触媒・実プロセスでの検証やスケールアップ、企業の商用化計画は示されていないため、投資テーマとしての実体化には実験・実証の進展を待つ必要がある。スピン分解LDOSによるメカニズム解明は、今後のMI/高通量スクリーニング型の触媒開発に転用可能な設計指針という意味で注目したい。