回転圧延と後続熱処理によるCu-35.8%Zn真鍮の機械的特性の最適化
Optimization of Mechanical Characteristics of Cu-35.8%Zn Brass by Rotary Swaging and Subsequent Annealing
室温での回転圧延(RS)と350°Cでの後続熱処理が、Cu–35.8%Zn二相真鍮の微細構造、機械的特性、疲労強度に与える影響を調査した。RS後、α相とβ′相の結晶粒が加工方向に沿って伸長した構造が形成された。また、α相結晶粒内にサイズ200~300 nmのサブグレイン、幅100~200 nmのせん断帯、幅10~30 nmの加工双晶が形成されることが示された。RSにより、降伏応力(YS)は93±4 MPaから717±6 MPaに、引張強度(UTS)は332±2 MPaから744±19 MPaに増加し、延性(El)は71.0±2.0%から10.3±1.7%に低下した。疲労限度もRS後に240 MPaから415 MPaに増加した。350°Cでの後続熱処理により、サイズ2.2~3.6 μmの方形状結晶粒が形成されα相の再結晶が誘起され、UTSは462~466 MPaに低下し、延性は44~45%に増加した。熱処理時間を4時間まで延長しても、合金の強度と延性値に影響はなかった。
- Cu-35.8%Zn二相真鍮に室温回転圧延(RS)を施すと、α/β′相結晶粒が加工方向に伸長し、α粒内に200~300 nmのサブグレイン、100~200 nmのせん断帯、10~30 nmの加工双晶が形成された。
- RSにより降伏応力は93±4 MPaから717±6 MPa、引張強度は332±2 MPaから744±19 MPaへ上昇し、延性は71.0±2.0%から10.3±1.7%へ低下、疲労限度も240 MPaから415 MPaに向上した。
- 350°Cでの後続熱処理で2.2~3.6 μmの方形状結晶粒が形成されα相が再結晶し、引張強度は462~466 MPaに低下、延性は44~45%に回復した。
- 熱処理時間を4時間まで延長しても強度・延性値に変化はなく、熱処理条件に対する安定性が確認された。
Cu-35.8%Zn二相真鍮に対する回転圧延(RS)と350°C後続熱処理の組合せで、降伏応力93→717 MPa、引張強度332→744 MPa、疲労限度240→415 MPaへと大幅な強化が実験室レベルで示された。一方、熱処理で延性を44~45%まで回復させつつUTSを462~466 MPaに調整できるため、強度と延性のトレードオフを熱処理で設計できる点が素材設計上の意味を持つ。ただし論文段階のラボ成果であり、量産工程へのスケールアップやコスト、実部材での疲労データが未確認なため、現時点では直接の投資機会には結び付きにくく、銅合金加工・熱処理を手掛ける素材メーカーの技術動向として注視する段階と判断する。