有機PCMの低熱伝導率にもかかわらず80kW超の放電電力を実現したデュアルPCM熱電池
A Dual PCM Thermal Battery Delivering More than 80 kW of Discharge Power Despite the Low Thermal Conductivity of Organic PCM
再生可能エネルギーシステムの普及には、持続可能で高エネルギー密度の貯蔵技術が必要とされている。相変化材料(PCM)を用いた熱エネルギー貯蔵は有望だが、PCM自体の熱伝導率の低さが(充放電)出力を制限している。本研究では、PCMの熱伝導率を向上させることなく、熱交換器の設計最適化により高い放電電力を達成できることを実証した。家庭用温水と暖房用の2つのPCM貯蔵槽に水熱交換器を組み込んだ実証機を設計・調査した結果、PCM熱交換器の体積0.79 m3、PCMの熱伝導率0.16 W·m−1K−1という低さにもかかわらず、80kW超の放電電力を達成し、トランジット水がタンクから完全に排出された後は65kWを維持した。この性能は、PCMからフィンまでの最大距離を約1.5mmに制限しつつ、203 m2の伝熱面積を提供する熱交換器設計によって実現された。融解時にはサーモサイフォン駆動の自然対流も観測され、伝熱をさらに向上させる可能性がある。これらの結果は、コンパクトで高出力なPCM熱エネルギー貯蔵を実現するための主要な設計パラメータは、PCMの熱伝導率ではなく、熱交換器の形状であることを示している。
- 有機PCMの熱伝導率0.16 W·m−1K−1という低さにもかかわらず、熱交換器の設計最適化(伝熱面積203m2、PCMからフィンまでの最大距離約1.5mm)により80kW超の放電電力を実現した実証機を設計・調査した
- PCM熱交換器体積0.79m3で80kW超の放電電力を達成し、トランジット水がタンクから完全に排出された後も65kWを維持した
- 融解時にサーモサイフォン駆動の自然対流が観測され、伝熱をさらに向上させる可能性が示された
相変化材料(PCM)を用いた熱エネルギー貯蔵システムで、材料自体の熱伝導率を上げずに熱交換器の設計最適化(伝熱面積203m2、フィン距離約1.5mm)だけで80kW超の放電電力を実現した点は、エネルギー貯蔵のコスト・性能向上に資する実証成果と言える。再生可能エネルギーの普及における系統安定化・家庭用熱供給の分野で、PCM貯蔵の実用化可能性を高める技術的な裏付けとなっており、熱貯蔵関連スタートアップや熱交換器設計技術の動向に注目する価値がある。